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研究ハイライト情報
研究ハイライト
和文:
二酸化チタンの光触媒活性を決める因子を発見 -高効率光触媒開発に新たな指針-
英文:
関係者
和文:
小澤健一
,
松田巌
,
山本達
,
坂間弘
.
英文:
KENICHI OZAWA
,
Iwao Matsuda
,
Susumu Yamamoto
,
Hiroshi Sakama
.
関連ドキュメント
内容
和文:
●背景
光触媒材料として利用される二酸化チタン(TiO2)には,ルチル型とアナターゼ型がある。このうちアナターゼ型はルチル型より触媒活性が高いことが知られているが,その違いを生み出す要因は不明だった。光触媒活性は,光吸収により形成されたキャリアが結晶表面に到達して分子と相互作用する過程と,キャリアが表面に到達する前に再結合して消滅する過程の二つの競争によって決まる。このことから,キャリア寿命が長いほど前者の過程が優勢になり,光触媒活性は高くなることが予想される。TiO2結晶内部における光励起キャリアの振舞いについては,これまでの研究から多くの知見が得られている。ところが,光触媒反応に関与する結晶表面のキャリアを研究した例はほとんどない。TiO2結晶表面で光触媒反応がどのように進行するか,ルチル型とアナターゼ型TiO2の光触媒活性がなぜ異なるのかを明らかにするためには,結晶表面のキャリアを直接評価する必要があった。
●研究成果
本研究では,半導体に特有な現象として知られている表面光起電力(SPV)効果に着目し,SPVの測定からTiO2結晶表面の光励起キャリアを評価した。SPVの大きさは表面に到達した光励起キャリアの数に比例し,TiO2表面の価電子バンドや内殻準位のエネルギー位置に反映される。従って,光電子分光法によりこれらのエネルギー位置やその時間変化を追うことで,光励起キャリアの情報が得られる。
ルチル型とアナターゼ型TiO2 表面ともに,光励起キャリア発生(時間0)からの時間経過とともにSPVが小さくなる。これは,光励起直後に表面に移動した電子が,結晶内部から遅れて表面に移動してきた正孔と再結合して消滅していることを示す。二つのTiO2 結晶表面では,正孔に対する表面ポテンシャル障壁が形成されており,その高さはアナターゼ型で0.2 eV,ルチル型では0.4 eV だった。熱電子放出モデルを適応してSPVの時間変化を解析すると,アナターゼ型のキャリア寿命は50ナノ秒,ルチル型では180ナノ秒となった。
キャリアの寿命の長さが光触媒活性と相関があるならば,この結果はアナターゼ型が高活性である事実から予想される結果と相容れない。ところが,キャリア寿命に及ぼすポテンシャル障壁の影響を考えると,キャリア寿命が逆転することが分かった。表面ポテンシャル障壁は,結晶表面の化学状態(表面にどのような分子がどのくらい吸着しているのか,結晶表面に格子欠陥があるか)に敏感に応答する。従って,ポテンシャル障壁の高さがゼロの時のキャリア寿命は,表面の化学状態に依存しない物理量として重要である。熱電子放出モデルの解析からはポテンシャル障壁がない時のキャリア寿命も求められ,アナターゼ型で0.25ナノ秒,ルチル型では0.020ナノ秒となった。これが結晶表面に固有のキャリア寿命と言ってよく,アナターゼ型の固有のキャリア寿命は13倍もルチル型より長いことが明らかとなった。アナターゼ型TiO2がルチル型TiO2より光触媒活性が高いという事実を,キャリア寿命の観点から証明する初めての直接証拠が得られた。
●今後の展開
本研究で得られた重要な知見の一つは,光励起キャリアの表面への移動速度が表面ポテンシャル障壁に強く依存するという点である。キャリア寿命がTiO2の光触媒活性を左右する重要なパラメータの一つであり,表面ポテンシャル障壁がTiO2表面の化学状態により制御できることを考慮すると,光触媒活性を表面の化学処理で制御できることが原理的には可能になる。このことは,目的とする化学反応に応じて最適なキャリア寿命を持つ光触媒を設計できることを示唆しており,触媒設計開発に新たな指針を与えるものである。
英文:
開始年~終了年
2012~2016
国内外区分
国内
言語
Japanese
URL
http://www.titech.ac.jp/news/2014/027874.html
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