音韻的作動記憶(phonological working memory)は,短時間の音声情報の保持・処理を担うシステムであり,幼児を対象とした研究で母語(e.g., Baddeley, Gathercole, & Papagno, 1998)や第二言語(Hu, 2003)の新しい単語の習得とも関わることが報告されている.
音韻的作動記憶の能力の測定がより純粋にできる方法として,近年,非単語反復課題が用いられるようになった.英国のGathercoleらのグループが開発したCNRep(Children’s Test of Nonword Repetition)が代表的な課題として挙げられる.これは単語としては存在しない音の羅列(非単語)を聴覚提示し,それを口頭で即時再生(反復)させるという課題である.
先行研究では幼児を対象としているが,本研究では日本語学習者を言語習得の途上にあると捉え,音韻的作動記憶の能力を測定し,語彙力や聴解力などの言語能力との関係を探ることを目的とする.音韻的作動記憶の能力を測定するため,CNRepの考え方に基づき,日本語学習者向けのテストを新たに作成した.