本発表では、内容言語統合型学習(CLIL)に基づいた大学学部レベル留学生向けの日本語教育における「PEACE」プログラムの実践報告と、実践で使用している教材におけるスキャフォールディングと教師によるスキャフォールディングを考察するものである。「PEACE プログラム」とは、「P:Poverty 貧困からの脱却」「E:Education 教育」「A:Assistance in need 自立のための援助」「C:Cooperation & Communication 協働と対話」「E:Environment環境」という5 つの内容を含むものである。発表者らは特に「貧困問題」をテーマの切り口として取り上げ,世界の現状を知り,説明し,考え,発信する日本語力と学習スキルを養うことを目的として授業を実施している。実践授業では,調べた内容をグループでポスターにして発表する活動,本や視聴覚教材を通して世界の貧困のメカニズムや現状を学ぶ活動,1 冊の本を学習者で分担して読んで内容を紹介する分担読解,貧困問題に取り組む社会企業家や団体の取組みをグループで紹介する活動を行った。プログラムの最後に一連の授業を振り返り,当事者として,今そして将来何ができるのかについて話し合った。本発表では「PEACE」プログラムの授業で用いている自作教材の分析とTA による授業の観察記録の分析、学習者のポートフォリオによる分析から、教材と教師のスキャフォールディングの役割について、考察する。日本語教育におけるCLIL教材はまだほとんどなく、日本語教育におけるCLIL の教材開発へ向けて、学習者と教師にとって必要なスキャフォールディングとは何かについて考えたい。