タンパク質の立体構造情報を用いた構造ベースバーチャルスクリーニングは,他手法と比べて新規性の高い薬剤候補化合物を発見しやすいなどの利点がある.一方で,使用する標的タンパク質の立体構造によってスクリーニング精度が大きく変化するという問題があり,一般的に単体構造であるapo体よりもリガンドとの複合体構造であるholo体を用いた方が精度は良いが,予測された立体構造については結果は未知であった.そこで,本研究ではタンパク質立体構造予測の代表的な手法であるAlphaFold2を用いて予測した立体構造を活用して,構造ベースバーチャルスクリーニングの精度を検証した.特に,どのような予測構造を用いると精度が向上するかをDUD-E diverse subsetの8標的で網羅的に検証した.その結果,テンプレート構造を使用せず,リガンド周辺の残基によるRMSD距離行列からクラスタ外れ値を抽出する方法が最適であった.各標的のスクリーニング性能は共結晶構造と同等か若干劣る程度であったが,一部のタンパク質は共結晶構造を上回るスクリーニング性能を示した.以上の結果は,構造ベースバーチャルスクリーニングの適用範囲を,予測による立体構造を活用することで大幅に拡張できることを示唆している.